研究紹介

研究紹介

リンパ浮腫についての研究

婦人科がん患者の生活の質では、下肢リンパ浮腫が容姿にも影響することから、どのようにしたら発生しないか、どのようにしたら軽減するか等の研究がなされています。
すでに治療を受けて長い時間が経過した下肢リンパ浮腫のある方も、今の新しい情報を検索してみてください。

論文名小川佳宏:エビデンスに基づいたリンパ浮腫の保存的療法
内  容リンパ浮腫治療の第一人者である小川医師による論文です。リンパ浮腫は、早期診断治療が軽症のまま維持でいるのですが、診断が難しいようです。リンパ浮腫の保存的治療の基本的なスケジュールはがん情報サービスで公開されています。
複合的理学療法が基本で、日常生活指導で悪化を防ぐことが重要とあります。
婦人科の手術を受けた人は起こるものとして毎日の観察が欠かせないでしょう。
雑誌名静脈学24(4:)447-456
年号2013年
論文名尾崎福富,他:下肢片側性リンパ浮腫に対する複合的理学療法
内  容男性3名を含む25名を対象者に行った研究です。圧迫とリンパ誘導マッサージの複合的理学療法を行った結果、腫脹は減少し、浮腫減退率は46%となりました。
リンパ浮腫の日常管理も文献:松尾善美(1997):リンパ浮腫の日常管理、理学療法809-813を参考に21項目にまとめられています。
雑誌名理学療法学27(5)167-173
年号2000年
論文名蘆野吉和,小川佳宏,他,リンパ浮腫多施設研究グループ:リンパ浮腫の複合的理学療法の有効性に関する国内11施設の前向きベースライン試験 (EFFECTIVENESSOFCOMPLEXPHYSICALTHERAPY(CPT)OFLYMPHEDEMAINAPROSPECTIVEBASELINE-CONTROLLEDSTUDYINELEVENDOMESTICFACILITIES)(英語)
内  容日本国内の11施設において,リンパ浮腫の複合的理学療法(ComplexPhysicalTherapy:CPT)の有効性をみています。
リンパ浮腫外来の,悪性腫瘍術後にリンパ浮腫治療を必要とする成人患者233例が対象でした。
CPTを実施し,治療の有効性に関するデータ〔浮腫容積の計算に必要な身体計測値,生活の質(QualityofLife:QOL)質問票〕を調べています。
集中排液期の患者では,浮腫容積の有意な減少がみられた。SF-36健康調査(および皮膚の状態についてのアンケート(Skindex29)を用いたQOL評価では,治療による有意な改善が認められた。
雑誌名診療と新薬51,1053-1059
年号2014年
論文名穴田佐和子他:下肢リンパ浮腫患者における圧迫用品の簡易化による圧変化と所要時間変化
内  容重症リンパ浮腫の改善を目的に後藤学園附属リンパ浮腫研究所が開発を行った簡易圧迫用品WaveGarment(WG)*を数種の包帯と組み合わせ,通常の多層包帯法と比較し,圧迫圧および,圧迫療法にかかる負担度を調べています.
5名の対象者が,いずれの方法においても通常の多層包帯と同様に十分な圧迫圧が得られた.所要時間においては,圧迫療法にかかる時間が23~65%軽減し,患者の労力と時間的負担が大きく改善したことが報告されています.
雑誌名静脈学27(3)413-419
年号2016年
論文名森井ひろ子他:骨盤内リンパ節郭清術を受けた婦人科がん患者の下肢リンパ浮腫の実態とQOLへの影響
内  容骨盤内リンパ節郭清術を受けた婦人科がん患者の下肢リンパ浮腫の実態とQOLへの影響を調べている。アンケート調査で、270名の回答を得た。その結果、172名(63.7%)が術後にリンパ浮腫を自覚していた。
重症度別では0期(むくみがない)が110名、1期(むくみに日内変動があり安静で改善)が93名、2期(1日中むくみがあり安静で改善しない)が46名と、全体の55.8%が1期以上の浮腫であった。
また、通常、浮腫の自覚に乏しく、外観でも浮腫がわかりにくい1期において、正座、立ち仕事など日常生活での支障を2期患者と同程度に感じていることを明らかにしています。
雑誌名臨床看護38(11)1598-1602
年号2012年
論文名樋口佳那子,他:婦人科がんリンパ節郭清術後患者に対する退院時のリンパ浮腫セルフケア指導と退院後のリンパ浮腫の進行度との関連
内  容婦人科癌リンパ節郭清術後患者に対する退院時のリンパ浮腫セルフケア指導と退院後のリンパ浮腫の進行度との関連を調べています。この手術を受け、退院時にリンパ浮腫セルフケア指導を受けた69名を対象に、術後1年以上経過した時点で随時アンケート調査を行った結果です。 
58名(平均年齢48.7±11.0歳)のうち、退院指導時に17名(29.3%)にリンパ浮腫がみられ(全例、重症度1期)、術後1~2年で浮腫を認めた患者は1期31名、2期3名の34名(58.6%)であった。
しかし、退院指導時に1期であった患者17名のうち16名は1期に留まっていた。
雑誌名臨床看護(38)11:1592-1597
年号2012年
論文名塚越みどり,前川二郎:LVA術後の続発性下肢リンパ浮腫患者が実施する運動の現状
内  容続発性下肢リンパ浮腫の診断でリンパ管静脈吻合術(LVA)の術後1年以上経過した女性患者34例(平均56±8.2歳)を対象としています。リンパ浮腫の原疾患は、婦人科がん33例、下肢軟部腫瘍1例です。週1日以上、30分以上の定期的な運動を行っている患者28例(運動群)とそうでない患者6例(非運動群)で比較している。運動として実施されていた内容は、ウォーキングが19例(67.9%)、水泳が4例(14.3%)、その他は5例(17.9%)で自転車や筋力トレーニング、テニスなどであった。術側下肢の体積平均を面接時と1年前の来院時で比較すると、運動群が、大腿体積は小さくなっていた。運動群のBMIは減少、非運動群は増加し、有意差があった。
雑誌名リンパ学40(1)17-22
年号2017年
論文名西田恭子他:術後早期からのリンパ浮腫予防の効果 婦人科がん患者へのセルフマッサージ指導を通して
内  容リンパ浮腫予防の看護ケアの評価に関する研究です。婦人科がん患者のリンパ節郭清術後当該患者38名に,術後4日目前後に受け持ち看護師がパンフレットを用いて用手的リンパドレナージMLDの手技確認,日常生活における注意点などの指導を約20分間実施しています。 
その効果を,術前および術後3ヵ月後に下肢の周囲長の計測,およびSTAI(StateTraitAnxietyInventory)を用いたアンケート調査で評価しています。
その結果,術後早期からMLD指導を行ったことで,浮腫の自覚が出た患者は自ら早期に対応できており,不安の軽減につながっています。
雑誌名看護学雑誌69(11)1126-1130
年号2005年

*圧迫性被覆・保護材のG-HOGWAVE(ジーホグウェーヴ):
学校法人後藤学園付属リンパ浮腫教育支援センター(旧リンパ浮腫研究所)との共同開発されました。リンパ浮腫疾患でおこった皮膚症状を改善する圧迫補助材です。包帯類や圧迫用品をつかって外側から適度に圧迫することにより、マッサージ効果を生み出す特殊なスポンジが皮膚の肥厚をやわらげ、過剰にたまった組織液やリンパ液の排液を促します。

引用:日進医療器株式会社ホームページ(2020.5.16アクセス)https://www.nissin-iryouki.jp/product/g-hogwave